【精力剤の成分 その4】
▼沙参 (しゃじん)
中国および東南アジアに広く自生するキキョウ科の多年草であるツリガネニンジンの根を薬用とします。
茎は三十から六十センチに伸び、円形の葉を出し根は大型の紡錘状をして、生根は煮て食用にして用いるところもあります。
局所刺激作用があり、補陰、止咳の効能もあります。
強壮、強精、熱を去り、痰を切り多眠症を治します。
呼吸器疾患に効あり、肌を美しくします。
高麗人参の代用として使用され、古典には「五臓を安んじ 、久しく服すれば、人を利し、気を益し、肌肉を長ず」 とあります。
成分としてはサポニンやイヌリンが知られています。
一日五~八グラムを煎薬、または浸薬として用います。
▼仙茅 (せんぽう)
わが国の中国地方以南、ヒガシアジア、オーストラリアなどに広く分布するキンバイザサ科の多年草。
根茎を利用します。
葉が黄色くて金梅を思わせるため「金梅笹」という名前があります。
中国では婆羅門参といって、唐の玄宗皇帝の命により西域のバラモンの僧が献じたのが始めで、その効果は高麗人参以上ともいわれ、薬効は乳の十倍以上ともいわれます。
わが国には千年以上も前に渡来したようですが、民間人には知らさないで、権力階級のみで利用されていました。
主な薬効としては強精、性力を強くし、回春の効に著しく、健脳、視力を強くし、顔色をよくします。
ともかく、中国強精史上多くの伝説を持つ強精薬。
唐以降の宮廷では性の秘薬として皇帝その他の少数の権力者が密かに用いたと伝えられる宮廷薬です。
一日六グラムを煎薬、浸薬として用います。
▼竹節人参 (チクセツニンジン)
北海道から九州まで自生するウコギ科の多年草。
トチバニンジンの根茎を用います。
主要成分としてはパナックスサポニン、パナックスプロサポゲニン、パナックスサポゲニン、オレイン酸など高麗ニンジンと同じ系統の成分を多量に含んでいます。
ニンジンの代用として用いられるのも薬理的に説明がつくわけで、ことに去痰と解熱作用は人参より勝るといわれます。
おもな薬効としては新陳代謝機能を刺激して強壮、強精効果が高く、健胃、痰をきり咳を鎮める作用もあります。
一日三~五グラムを煎薬として三回に分服。
▼天台烏薬 (てんだいうやく)
中国原産のクスノキ科の落葉低木、テンダイウヤクの根を用います。
わが国の近畿や九州にも野生化しています。
樟脳に似た香気があります。
秦の始皇帝の命により、不老長寿の薬を求めにきた徐福がこの木を日本に伝えたという話もあります。
烏薬には精油成分としてボルネオール、リンデラン、リンデレン、リンデレロールなどが含まれ芳香性の健胃作用があります。
中国ではこの若葉を重視して、日常茶の代わりに炒って用いると百年の寿を得るといいます。
中国の古典には強壮、強精作用があると伝えられています。
強壮と若返り、健胃、神経痛を治し、不老の効があります。
沈香、人参、甘草と配合すると強精と回春に著効を現すと伝えられています。
▼丁香 (ちょうこう)
精気を興奮させ、強壮と回春に効があります。
口中と身体の臭気を消します。
香料として服用し、肌にもつけます。
二次的作用として、健胃剤として、痛みをとめる効もあります。
成分としては精油 (オイゲノール、アセチルオイゲノール、チャビコール、フムレン、カリオフェレンなど) 、タンニンが含まれます。
古代から近代までの丁香史によると、香料というよりは興奮 性媚薬として性的虚弱者の回復に用い、内服して強精に利用すると同時に、塗布剤、挿入剤としても重宝していたようです。
一日量三~五グラムを煎薬、又は浸薬として三回に分服します。
食後三十分頃に服用します。
原植物はチョウジというインドネシアのモルッカ諸島の原産で 一八世紀までモルッカの特産であったが、現在では東アフリカ産がほとんどです。
かって丁香は黄金と同じ価格であったといいますが、現在では安価に手に入れることができます。
▼肉従容 (にくじゅよう)
主に強精、精力を強くし、遺精、夢精、淫萎などに効果があります。
その他、痛みを鎮め、血を清め、肌を美しくする作用もあります。
古典には「五労七傷と中を補い、五臓を養い陰を強くし 精気を益す」とあります。
男女ともに強精催春薬として中国では古くから賞用されている秘薬です。
ことにこれが喜ばれるのは、常用しても少しもほかに副作用をおこさない点です。
唐時代以降は歴代王侯でこれを用いなかったものはないとまでいわれます。
成分はボシュニアキン、ボシュニアラクトンなどのモノテルペン化合物、フェニルプロパノイド配糖体やアルカロイドが含まれ、ネコにたいしてマタタビと同様の作用がある。原植物はホンオニクで寄生植物で肉質茎。
日本産はオニク (キムラタケ) で、ミヤマハンノキの根に寄生しています。
肉従容は別名を大芸といい、葉は退化し鱗状となって茎についています。
春に採取したものは砂に半分埋めて乾燥させ、淡大芸といいわが国にも輸入されています。
秋に採取したものは水分が多いため塩湖に数年つけてから乾燥させ、塩大芸と称します。
煎薬として用いる場合は一日量十グラム。
インポテンツ、遺精に効果があります。
▼石斛 (せきこく)
日本の本州、四国、九州、朝鮮半島南部、中国などに分布するラン科の多年草、セッコクおよびその同属植物の茎を用います。
セッコクには「スクナヒコナグスリ (少名彦薬) 」とか「イワグスリ (岩薬) 」などという和名があり、日本でも古くから薬用にされたと思われます。
セッコクは樹上や岩石などに着生しています。
この花の開花前の全草を刈り取って、乾燥したものが生薬石斛。
精を強くし、回春の喜びをもたらし、美声薬ともなります。
その他、寝汗を治し、陰萎に効があります。
古典には「五臓の疲れと痩せを補い、陰を強くし精を益す」とあります。
石斛は中国でも三千年の昔から、強精、催春の効を認めており、人参に代用する効果が実証されています。
陰萎などの心身虚弱による寝汗を治し、しかも胃腸に障害を与えません。
成分としては粘液質やデンドロピン、ノビロニンなどが含まれます。
一日量三~六グラムを煎薬、または浸薬として三回に分けて服用。
▼旋花 (せんか)
主な薬効は強精薬となり、全身の強壮に役立ち、回春の効果があります。>
利尿剤として腎臓にもgood。
その他、緩下剤として、顔や肌を美しくする作用があります。
古典には「精を秘し、髄を益す」とあります。
旋花は胎内の諸毒を下して腸を清掃し、あらためて精気をたくわえる作用あるといわれます。
副効果としては肌肉の色を白くして艶をよくする作用もあります。
入手することが容易な薬草であるから古くから広く用いられています。
ただし量を過ごすと下痢をおこして逆効果。
成分はケンフェロール配糖体、サポニンなど。
一日量五グラムを煎薬または浸薬として一日三回に分服します。
下痢が激しいようならば、量を減じて軟便程度に。
旋花の現植物はヒルガオで東アジア全域に自生する多年草。
朝顔に似ていて十センチ位に伸び、七~八月頃淡紅の花をつけます。
この全草を採取して乾燥したものが生薬旋花です。
▼連銭草 (れんせんそう)
主な薬効としては強壮剤であり、強精の効も著しく精神を鎮静させる効もあります。
小児の疳とり薬としても利用されます。
本邦では小児の疳とり薬として広く使われていますが、強壮剤としても利用されています。
フランスでは局方に強壮薬として搭載されており、その他欧州各国でも相当な利用を示しています。
葉や茎には精油成分のL-ピノカンフォン、L-メントン、Lプレゴン、リモネンのほかウルソール酸、硝酸カリウムなどが含まれます。
漢方では清熱、利尿、通淋、止咳の効能があり、黄疸や浮腫、排尿障害、咳、湿疹などに用います。
近年中国では連銭草に尿路結石には海金沙、胆石症にはインチンコウ、ウコンなどと配合した胆道排石湯などが試みられています。
また糖尿病にも利用されています。
一日量六~十グラムを煎薬として用います。
現植物は日本各地、台湾、朝鮮半島、中国などに分布するシソ科の多年草、カキドウシの全草を用います。
茎が伸びて垣根を通り抜けることから「カキドウシ」と呼ばれます。
丸い葉が茎に連なっているため連銭草の名があります。