【精力剤の成分 その5】
▼枸杞葉 (くこよう)
精力増強に使う場合は若葉を用います。
主な薬効として強壮と強精効果があり、催春の薬としても用い、陰萎を治します。
その他解熱にも効あり、目を丈夫にし、利尿と鎮静に卓効があります。
古典にも「煩を除き志を益し、五労七傷を補い、心気を盛んにし、皮膚骨節間の風を去り、熱毒を消す」とあります。
枸杞子もよいが葉と茎を刻んだものもよく効きます。
枸杞は若葉のときに摘んで茹で、したしもなどに食べることもできます。
堅くなった茎葉は乾燥してから少し炒り、茶の代わりに一つまみを入れ、毎日用いると効果的です。
枸杞については有名な伝説があります-「家を去って千里を行く 、羅摩と枸杞は食うなかれ、この二物は精気を補益し陰道を強盛するをいうなり」。
強精薬として用いる場合は一日量十グラムを煎薬、または浸薬として三回に分服。
散薬として用いる場合は一日八グラムを三回に分服。
▼南天燭 (なんてんしょく)
庭木に栽培されているナンテンの葉。
果実が咳止めに使用されるのはよく知られているが、葉には強精、強壮作用があって心気を興奮させ、陰萎を治す効果があります。
熱を除き、嘔吐を治し、血圧低下の作用も認められています。
古典には「筋骨を強くし、気力を益し、精を固くし、顔を駐む」とあります。
南天燭は葉、皮、果実ともにそれぞれ薬効があり、古くから 庶民に親しまれています。
強精に効果があるのは葉が一番。南天の実にはアルカロイドのドメスチン、ナンテニン、プロトピンなどが含有されており、知覚神経を麻痺させたり、心臓の運動を抑制する働きもあります。
葉には微量の青酸がふくまれていますが、この青酸が南天特有の成分と結びついて強精効果をあげると考えられています。
青酸は梅の実や杏の実にもふくまれており、結合体だから、心配はいらないようです。
南天燭は本邦では南天と呼ばれ、中国原産の常緑樹で、千年前から渡来し、全国的に栽培されています。
南天はどこの家庭にも庭木として栽培されていますが、その葉を水洗いしてそのままカサカサになるまで天日で干して使用します。
▼五味子 (ごみし)
滋養剤として弱い体を強くし、強精と強壮に効をあげ、回春の喜びを与えます。
又、咳を鎮め、腸を強くし、肌を美しくする作用もあります。
古典に「不足を補い、陰を強くし、男子の精を益す」とあります。
滋養、強壮、強精薬として中国最古の薬典にも記載されており 一度は試してよい強精薬です。
古い中国の薬効がほとんどそのまま現在も使われており、少しも副作用のない安心して服用できる強精薬。
果実にはクエン酸、リンゴ酸などの有機酸、シザンドリン、ゴミシン、プレゴミシンなどのリグナン類、シトラール、カミ グリンなどのセスキテルペン類などが含まれます。
シザンドリンやゴミシン、には鎮痛、鎮頸、鎮静、鎮咳、抗潰瘍作用があり、近年、ゴミシン、には肝機能改善作用が注目され、急性肝炎の治療薬として注目されています。>
原植物はチョウセンゴミシはモクレン科の落葉蔓草で、本邦の 中部以北、朝鮮、中国山地に自生する。夏季に黄白色、または淡紅色の花を開き芳香があります。
実は球形で赤く熟した頃に採取して乾燥したものが生薬五味子。
▼しつ藜子 (しつりし)
主な薬効としては精力を強くし、全身を強壮にします。
ほかには、肌を美しくし、利尿薬としてもよく、解熱の効もあります。
古典には「腎を補い、腰痛、精減、虚損を治す」とあります。
しつ藜子 (しつりし) は古くから賞用されている強精回春の要薬で、副作用もなく安全な生薬です。
強精効果の主成分はケンフェロールなどのフラボノイドハルミンなどのアルカロイドしかしられていないが、三百年来の実証によって現代も用いる人が多いのをみても効果はあるのではないかという見解もあるようです。
健康人が疲れをとり精気を養うためには一日八~十グラムを煎薬、浸薬として三回に分服。
古書の通り炒って、刺が茶色になるくらいにして用いるのがgood。
原植物はハマビシで本邦の海岸地帯に自生する一~二年草。
茎は一メートル内外に伸び全株にあらい毛があります。
▼地膚子 (じふし)
強精の効著しく、陰萎を治し、回春と催春に効あり、精力を旺盛にします。
排尿をよくし、解熱薬となり、水腫を治します。
古典には「丈夫陰萎にして、起らざるを治し、気を補い力を益す」とあります。
数ある強精回春薬のなかでも、古くからその効が実証された要薬の一つ。
原植物は野生、栽培とも多くあるので値も安く、人参などの高貴薬に比べて庶民的なうえに著効があるので、広く愛用されてきました。
連用しても副作用がなくかすかに匂いがあるが、無味だから服用しやすいです。
一日量六~十グラムを煎薬、浸薬として分服。
地膚子 (じふし)の原植物は本邦ではニワクサ、ハハキギホウキギ。
中央アジア原産で、中国、西アジアを経由して帰化しました。
一年草で、茎は一メートル位にのび庭に植えたり鉢植えにしたりします。
夏季に黄緑色の花をつけ、晩秋に二ミリ位の実をむすびます。
この果実が生薬地膚子です。
▼蛇床子 (じゃしょうし)
わが国ではセリ科のヤブジラミの成熟果実を蛇床子といっています。
カジネン、トリレンなどの精油成分が確認されています。
ヤブジラミは全国の山野に自生し、葉はニンジンに似て茎 たけ三十から四十センチに伸び、夏季に白い花を開きます。
蛇床子の大きさは卵形で長さ二~三ミリ、全面にトゲ状も 毛が生えており、山野を歩いていて衣服にくっつくと、なかなかとれないところからヤブジラミの名がついたものであるようです。
色は淡緑色で二個の実が密着しています。
抗トリコモナス、抗真菌作用、性ホルモン作用などが知られています。
陰部湿疹、インポテンツ、不妊症などの治療にも用いられます。
▼大棗 (たいそう)
体の弱い人には滋養薬となり、健康人には強精不老の効があり、神経を鎮める力もあります。
二次的薬効としては心身の緊張をほぐし、疼痛を治す効があります。
古典には「身中の不足を補い、百薬に和して、久しく服すれば身を軽くし年を延べる」とあります。
大棗には中国古来の王侯貴族たちは、長寿の秘薬として大棗とか乾竜眼を口に入れ、終日舌でころがして、その汁を服用していました。
これはまことに理屈にかなった不老回春法で現代のホルモン学説やストレス学説からも説明がつくといわれます。
強壮と若返りを求めるときは一日量五グラムを煎薬または 浸薬として一日三回に分服。
そのまま食べても差し支えないし、熱い湯のなかに大棗一個を浸し、しばらくおいて柔らかくなったところで食べてもgood。
大棗とはナツメのこと。ナツメはヨーロッパ東南部から、アジア全域にわたって栽培されています。
▼蓮肉 (れんにく)
強壮と強精に効があり、性力の回春と不老に効があります。
その他、虚弱な婦人を強健にし、夜尿症を治し、浄血の力もあり、嘔吐と口渇を治すといわれます。
古典には「心腎を交え、腸胃を厚くし、精気を固くし、筋骨 を強くし、虚損を補す」とあります。
蓮の歴史は人類とともにあり、エジプトパピルスのなかでも、蓮は薬方の一つとされています。
わが国には中国を経て伝来し、一千年以上前の古文書でも紹介されています。
蓮の花が咲き終わると蜂の巣状の花托が生じ、楕円形の果実を生じます。
硬い外皮をとって乾燥したものを生薬蓮肉といいます。
蓮肉の成分はネルンビン、ラフィノーズなどのアルカロイド。
しかし、微量なので大量にとらぬ限り中毒を起こすおそれはありません。
健康人が疲労回復、強壮、強精の目的で食べるときには一日量八グラムを食するといいでしょう。
▼楮実子 (ちょじつし)
主に、強壮と強精に効果があり、催春薬として用いられ 、陰萎を治し、不老の効果もあります。
二次的効果としては尿の出をよくし、肌を美しくし、視力を強くします。
古典には「陰萎水腫を治し、気を益し肌を充たし目を明らかに する、久しく服すれば老いず身を軽くする。」とあります。
楮とはコウゾの木。
古くから和紙の製造にはなくてはならぬ植物でコウゾ、ミツマタ、ガンピなどの樹皮を剥いでくだき、それで紙を作ったのだそうだ。
書籍や帳簿にするにはコウゾの紙が最も丈夫で永きに耐えます。
このコウゾの果実はゴマ粒位であるが、無味無臭で強性、強精薬です。
果実にはサポニン、ビタミンB脂肪酸のリノール酸などが含まれています。
一日量八グラムを煎薬として三回に分けて食間に服用。
▼女貞 (じょてい)」
女貞の原植物はネズミモチ又はタマツバキと呼んでいる常緑樹で、全国いたるところの山野に自生し、庭木などにも植えられています。
厚い円形の葉をして、夏季に白い花が咲きます。
長楕円形の果実は熟すると紫黒色になりますが、この実を乾燥したものを生薬女貞として用います。
果実にはオレアノール酸、ウルソール酸、マンニトールなどが含まれ、オレアノール酸には強心、利尿の効果が知られています。
精力の成分は明らかにされていません。
主な薬効としては強壮と強精に用い、精力を旺盛にし、衰えた性の活力を回春に導く効が強く、不老の効もあります。
神経の痛みを鎮めて、筋骨を強くする効果もあります。
古典には「陰を強くし、腰膝を健にし、白髪を変じ、目を明らかにする」とあります。
▼木天寥(もくてんりょう)
日本各地、朝鮮半島、中国東北部などに分布するマタタビ科のつる性植物マタタビの果実の虫コブを用います。
マタタビの花の子房にマタタビアブラムシが産卵し、そのため実は異常発育し凹凸不整の虫こぶとなります。
マタタビの葉や茎、果実に含まれるマタタビラクトンはネコ科の動物を興奮させ、陶酔状態にし、唾液分泌を促進します。
成分のアクチニジンは鎮痛作用や性腺に対する作用が実証されています。
主に心身を強壮に、精力を強化し、性を旺盛にします。
身体を温める効果もあります。
利尿、鎮痛の効もあります。
古典には「一切の風血を主治し、腰脚を理し、身軽くして白髪を変え老いず」とあります。
天寥酒はこの生薬で作る有名な強精酒。
▼和木瓜(わもっか)
和木瓜の原植物はクサボケ、ノボケ、ジナシ、シドミと呼ばれるバラ科の落葉樹で、本州南部と九州に自生しています。
高さ五十~六十センチに伸び、山地に育ったものは二メートルにも及ぶものもあります。
全株に刺状の茎がでて、早春に葉と前後して朱紅色の美しい花を開き、夏になって、二~三センチの楕円形の実を結びます。
酸味が強いが熟すると食用になります。
この果実を採取し、縦に四つわりにして乾燥させたものが生薬和木瓜として薬用にします。
唐木瓜はカリンのことで、咳止めである。和木瓜は主な薬効は衰えた体を強健にし、精力の強化と造血の効もあります。
熱さあたりや下痢に利用され、脚気を予防します。
刺激や副作用のない極めて安全な強壮、強精薬です。
▼土通草(どつうそう)
土通草の原植物はラン科のツチアケビでわが国の各地の山地に自生します。
高さ一メートルに達するものもあり、六月頃二~三センチの黄褐色の花を房状につけ、あと赤色の長さ十センチ位の紡錘状の実をつけます。
果実をつけた形が錫杖ににているので、ヤマシャクジョウともも呼ばれます。
この果実を乾燥したものが土通草。
味は渋く煎薬として用いられる。主な薬効としては全身の器官を健やかにし、精気を強め性機能を旺盛にします。
二次的には尿の出を良くし、淋疾を治す効もあります。
強精薬として江戸時代から用いられた要薬で、わが国の山地に産するため価も安くて、しかも無毒で副作用がなく安心して服用でき、且つ効果も期待できる薬草です。